こんにちは。ヒロです。
ビールのおいしい季節ですね。先日、ギネス社の「ドラフトギネス缶」という缶ビールに特許技術が使われていることを知り、実際に飲んでみたので紹介します。ギネス社といえば、アイルランドの老舗ビール会社、「黒ビール(黒スタウト)」で世界的に有名ですね。
冷蔵庫でよく冷やし(「3時間以上冷やしてください」との注意書きがあります。)、タブを引いて缶を開けると、中から「シュー」という音が数秒間聞こえてきました。グラスにゆっくり注ぐと黒いビールの中に無数の細かい泡が踊り、しばらくするとグラスの上部にクリーミーな泡の層ができました。この泡はなかなか消えず、ビールを最後までおいしく飲むことができました。
缶には「フローティング・ウィジェットの働きでクリーミーな泡を作り出します」と書かれています。ビールを飲み終わった後、缶を切り開いてみると、中から直径3cm程のピンポン玉のようなプラスチックの玉(ウィジェット)が出てきました。このウィジェットには1箇所、とても小さな穴が開いています。
IPDLで検索したところ、この技術に対応すると思われる特許を見つけました。その特許公報(特許第3,957,382号公報、「発泡性飲料のためのパッケージ及びパッケージ方法」)によれば、缶ビールの製造時、まず、蓋をしていない缶にビールを入れ、ウィジェットを浮かべ、少量の液体窒素を滴下するようです。その後、缶を蓋で密閉すると、ビール液面と蓋との間の空間(ヘッドスペース)で液体窒素が気化し、ウィジェット内の圧力が大気圧より高くなります。このように製造された缶ビールは、缶を開けたとき、ウィジェット内の圧力が大気に開放され、小さな穴から窒素等の流体が勢いよく噴き出すことによりビール中に細かい泡が拡散し、グラスに注ぐとクリーミーな泡の層が形成されるというわけです。
ギネスの魅力は「繊細でクリーミーな泡」ですが、本場アイルランドのパブで出されるのと同じ泡のビールを一般家庭でも楽しめるのは、この特許のおかげと言えますね。ギネスのウィジェット入り缶ビールが大ヒットしたため、アイルランド周辺の国では他社が次々と同様の技術を導入するに至っています。ギネス社は、この技術の開発に掛かった500万ポンド(約10億円!)を他社からの特許ライセンス料であっという間に回収してしまったそうです。
さあ、今夜もビールで、乾杯。明日の仕事への鋭気を養いましょう。