ノンアルコールビールと言えば、ビールの風味を維持しながら、アルコールや糖質の摂取による弊害を排除することができる高機能の飲料です。そこで今回は、ノンアルコールビールに関する商標と特許について紹介します。
まず商標について、第32類「アルコールを含有しない(アルコール分を含まない)ビール風味の清涼飲料」、第33類「麦芽及び麦を使用しないビール風味のアルコール飲料」等を指定商品とする登録商標として、例えば以下のものがあります(「/」は改行を表示、権利者名称中の「株式会社」を省略)。
商標登録第5430005号「のんある気分」(サントリーホールディングス)
商標登録第5636460号「スタイルバランス」(アサヒグループホールディングス)
商標登録第5661321号「PERFECT FREE/パーフェクトフリー」(キリン)
商標登録第5675504号「オールフリー/ALL-FREE」(サントリーホールディングス)
商標登録第5727110号「ドライゼロ」(アサヒグループホールディングス)
商標登録第5749004号「サッポロプラス/SAPPORO+」(サッポロビール)
次に、ノンアルコールビールに関する特許には、例えば、特許権者“ハイネケン テクニカル サービシーズ ピーブイ”による「ノンアルコールビール」(特許第2791343号、出願日:昭和63年9月8日、登録日:平成10年6月19日)があります。この特許の請求項1は次のように記載されています。
「麦芽汁乾燥粉末から水を用いて還元した非発酵麦芽汁と二酸化炭素を含み、前記麦芽汁乾燥粉末は噴霧乾燥した麦芽汁であることを特徴とするノンアルコールビール。」
この特許は6年間存続後、平成16年6月19日に登録料不納で権利消滅しています。ところで、上記請求項1はプロダクト・バイ・プロセス・クレームに該当すると考えられます。もし、この特許出願の審査が現在されていたら、平成27年7月6日以降、特許庁の運用で使用されている「プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する当面の審査・審判の取扱い等について」(※1)に基づき、明確性要件違反の拒絶理由が通知される可能性があると考えられます。
また、ノンアルコールビールに関する最近の話題と言えば、平成27年1月、サントリーホールディングスがアサヒビールを特許権侵害で提訴しました(※2)。
サントリーが侵害されたと主張している特許は、「PHを調整した低エキス分のビールテイスト飲料」(特許5382754号、出願日:平成24年11月19日、登録日:平成25年10月11日)です。この特許は、登録後、各請求項の「ビールテイスト飲料」を「ノンアルコールのビールテイスト飲料」に限定する訂正審判の審決が確定(平成26年8月7日)しています。訂正審決確定後の請求項数は60で、その大半が、飲料中のエキス分(%)、PH、糖質の含量、カロリー等を数値限定することにより発明を特定するものです。アサヒは、「サントリーの特許発明は既存製品から容易に想到できたものであり、進歩性欠如の無効理由があるから、権利行使をすることはできない」と主張しています。業界では、今後の裁判の動向が注目されています。(KO)
※1 https://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/product_process_C150706.htm
※2 http://toyokeizai.net/articles/-/63651