鉛筆の芯と同じ〇〇ですが・・・

  • 2015年06月30日

 こんにちは。SHOです。

 先日、欧州特許庁から発表された「European Inventor Award 2015」において、三人の日本人が「高純度のカーボンナノチューブを作成する製造方法」で非ヨーロッパ諸国部門を受賞しました(参考URL1、2)。

 カーボンナノチューブとは? 簡単に説明しますと、複数の炭素原子からなる単層または多層のシートを管状にした物質で、その直径は、数十nm以下の非常に小さな物質です(https://unit.aist.go.jp/ntrc/ci/の「単層カーボンナノチューブ」をご覧下さい)。カーボンナノチューブは、ナイロンと同じ程度の比重でありながら引張強度が鋼鉄の100倍以上もあるため、航空機や宇宙船などの構造材への応用が考えられています。また、電子移動度がシリコンの70倍もあって熱伝導率が銅の10倍以上もあるため、珪素に代わる半導体材料としての応用も考えられています。


 炭素は、人間の身体を構成する元素のうち三番目に多い元素であって、鉛筆の芯やダイヤモンドなどを構成するとても身近な原子です。一方、ここ20年でカーボンナノチューブの他に、複数の炭素原子からなる球状物質であるフラーレン(1996年ノーベル化学賞の受賞理由)や複数の炭素原子からなる単層のシート状物質であるグラフェン(2010年ノーベル物理学賞の受賞理由)のように、特異な分子構造の炭素物質が注目されています。これらの炭素物質は、鉛筆の芯と同じ炭素からできていますが、分子構造が異なるだけで私たちの生活をさらに便利にする可能性を秘めた特性を有しており、自然界の奥深さを考えさせられます。

 今後、日本人の方々が受賞した製造方法が普及することでカーボンナノチューブが世の中に普及していくとともに、未知なる構造の物質がさらに発見されることによって生活が便利になっていくことを楽しみにしたいと思います。

参考URL1 三人の日本人による欧州発明家賞の受賞を伝えるニュース記事(日刊工業新聞)
参考URL2 日本人の受賞理由となった公報(Espacenet)

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