こんにちは。SHOです。
先日、一般社団法人日本機械学会から2012年度の「機械遺産」が5項目発表されました。(http://www.jsme.or.jp/kikaiisan/index.html)「機械遺産」とは、機械技術の発展史上重要な成果を示すものであって、特に私たちの生活に大きな影響を与えた機械技術の中から日本機械学会が認定した機械技術のことです。
2007年から毎年複数の機械技術が認定され、今回の発表を含めて55項目の機械遺産があります。認定されている機械遺産を並べてみると、当然ながらそれぞれに歴史があり日本の技術史の一部を見ているようです。
これらの機械遺産の中で私が特に興味を惹かれたのは、「パテント・ヤズ・アリスモメトール」(http://www.jsme.or.jp/kikaiisan/data/no_030.html)です。
「パテント・ヤズ・アリスモメトール」とは、1個の円筒と22枚の歯車を備える機械式卓上計算機のことです。福岡県出身の矢頭(やず)良一によって発明され、1903年に特許が取得されています。「パテント・ヤズ・アリスモメトール」の詳しい構造や動作原理についての情報は今回入手できませんでしたが、解説した論文が最近出されています(http://ci.nii.ac.jp/naid/10015673646)。実は、彼が本当にやりたかったことはエンジン搭載の飛行機を発明することであって、この卓上計算機はその資金を得るために開発、販売したとのこと。実際、「パテント・ヤズ・アリスモメトール」を販売した資金を元手に飛行機を開発したそうですが、残念にも実現はしませんでした。奇しくも彼が特許を取得した1903年は、ライト兄弟が飛行機による有人動力飛行に初めて成功した年です。
乗除を行うときの桁送りが自動で行われたり、計算が終了すると動作も自動的に終了したりするなど当時の外国製に比べても優れた性能を有する卓上計算機を開発した矢頭良一の独創力および技術力は、素晴らしいものです。
今回、紹介した「機械遺産」は、その認定条件のひとつとして「動態保存」があります。なかには吉野山ロープウェイ(http://www.jsme.or.jp/kikaiisan/data/no_052.html)のように現在も活用されている「機械遺産」もあります。みなさんも是非、実物を目の当たりにして日本の技術史を感じてみてはいかがでしょうか。
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