先日、今年のノーベル賞受賞者が発表されました。日本人研究者では、北里大学の大村智先生がノーベル生理学・医学賞を、また、東京大学の梶田隆章先生がノーベル物理学賞を受賞されることとなり、日本中が大いに沸いています。
さて、日本人のノーベル賞受賞が報道されると、ニュースでその受賞理由について詳細な解説が行われますが、今回、ノーベル物理学賞の受賞理由の解説は難解であると感じられた方も多いのではないでしょうか。その中でも今回の受賞理由となっている実験的に質量が初めて測定された素粒子であるニュートリノですが、普段の生活ではその言葉に触れることすらありません。私は、いくつかのニュースを見ましたが、「私たちの生活にどのように役立つのでしょうか?」という質問について、解説者の方々もその答えに困られている感じでした。そこで、ニュートリノを利用した発明があるかどうか特許情報プラットフォームで検索してみました。
検索してみたところ、素粒子としてのニュートリノが公報に記載されている公開公報や特許公報はたくさんあるのですが、多くは原子核反応によって副次的に発生するニュートリノについて記載されているもので「主役」としての利用はなかなかありません。それでもさらに探してみるとニュートリノを「主役」とする発明を見つけました。
発明の名称:撮像装置 特許権者:独立行政法人科学技術振興機構(特許4925001)
この発明は、光の代わりにニュートリノを使って物体を撮像する装置です。ニュートリノならではの撮像結果が得られるようです。
発明の名称:通信システム 出願人:浜松ホトニクス株式会社(特開2003-115804)
この発明は、ニュートリノを使って通信を行う装置です。確かに、物質に対する透過力が極めて高いニュートリノを利用すれば地球の中心を通して地球の裏側と通信できるため、タイムラグがなくかつ安定して通信が行えそうです。ただ、地球も突き抜けてしまうほど透過力が高いためどのように受信するかが問題ですが・・・。
ちなみに、浜松ホトニクス株式会社は、ニュートリノを捕捉する実験を行っている岐阜県飛騨市のスーパーカミオカンデにおいて、ニュートリノと水との反応によって発生する光を検出する光電子増倍管を製造している会社です。スーパーカミオカンデでの研究成果が今回の梶田先生のノーベル受賞につながっています。
物質に対する透過力が極めて高いため捕捉することが難しくその性質があまり解明されていないニュートリノですが、岐阜県飛騨市のHPにスーパーカミオカンデやニュートリノについて説明する電子紙芝居(e紙芝居)があります。高校生以上向けと小・中学生向けとの二種類がありますので一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。
今は、未知なる素粒子であるニュートリノですが、今後研究が進んでいけばいろいろなことが解明され、私たちの生活に役立つかもしれません。そのときを楽しみにしたいと思います。
スーパーカミオカンデHP
http://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/sk/sk/neutrino.html
飛騨市のe紙芝居
http://www.city.hida.gifu.jp/b_sougou/w_sasshi/w_kamishibai/